事例紹介
 
ZRX 高走行距離車の点検手入れ事例

スクーターなら、もうすぐ7回目のゼロに戻ろうかという距離
 
 バイクの使われ方には大きく2通りのケースがあるようです。
 一つは、よくある趣味の乗り物として、二つ目は、日常の足。
 そして、とかくメンテナンスに追われがちなのは、一つ目!
 とにかく乗らない、シーズン中に月に数回程度の日帰りツーリングがせいぜいとか?
 その結果、バッテリーが上がったり、キャブレターが詰まったりとマイナートラブルが常につきまとう。
 こういったケースでは、後手に回らず、まずは上手な保管の仕方を勉強しよう!
 ところが、そうではなくて、日常の足としてフルに活躍している場合。
 これは、逆に意外なほどトラブルが出ない!
 何度も書くけど、やはり機械は動かしてこそ!ってことになるんじゃない?
 
 しかし、実のところは、いろんな部分が確実に消耗している〜!
 それが、予定通りに進んでいるから、特別な不具合となって現れてこない。
 また、日々少しずつ変化していくわけだから、中々異常として気付かない事もあるだろうし‥‥‥
 そういった点で、無責任な他人の目ってのは、役に立つかも?
 たまには、友人とバイクを変えっこしてみるのもいい方法。
 
 では、7万キロ近くに達したバイクは、どんな具合なんだろう?
 一般的に中古車店頭で良く見かける走行距離は、1〜1.5万キロ程度。
 それの4倍以上、仮にワンオーナーが1.5万で手放すと考えたら4人以上のご主人に仕えた事になる距離。
 このZRXは、幸せな事にワンオーナーでここまで可愛がってもらっている。
 普通、2〜3万キロを過ぎてくると、愛着よりも惰性状態となってしまいがち〜
 しかし、それでは決して辿り着けない距離が7万キロだろうとあらためて思う。
 この先、まだまだ調子よく走り続けてもらうために、新鮮な目で見つめ直すのだ〜!
 
リアサスとサイレンサーハンガーまわり
(手入れ後)

オーリンズサスの上部取付け部 同じく倒立シリンダー部
  
  何にもない当り前のような部分も見落とせない

 ネイキッドに多い2本ショックのリアサスの場合、可動部分は、スイングアームとショックだけ〜?
 で、スイングアームピボットやショックを点検する事になる。
 ところで、こんなブランドものでも距離が伸びれば消耗してるって例。
 左は上下取付部について、
 こういうのをアイブッシュと呼んでるけど、スイングアームの上下によってショックの角度が変化する。
 その動きを逃がすのがブッシュ。
 締め付けは、中心のカラーがされている為、直接ゴムは押し付けられてはいない。
 その為、ショックはゴムの弾性で回転方向に動けるわけ。
 だからナットもスイングしたからといって、簡単には緩まないわけ。
 でも、現実には、写真のようにゴムの側面が擦れてひび割れている〜!
 それは、取付けのワッシャーとゴム間にクリアランスが設けてあっても、擦れる時が有るという事。
 スイングアームにねじれるような力が加われば、ゴムはショックを左右にも傾けてしまうわけ。
 それが事実であるから、とりあえずはシリコングリス(チューブ入り)をしっかり塗っておこう!
 右は、スプリングとシリンダーの干渉について、
 これは、ショック自体にも曲げの力が加わっているという事。
 元々、スプリングとシリンダーが干渉する場合があるので、ラバープロテクターが設けられている。
 でも、それに擦り痕が付いている事実がある以上、ここにもシリコングリスを塗ろう!
 

 
  一度に全部を若返らせるのは大変

 各部の消耗劣化は、エンジン、駆動系、足まわり、電装品、車体と全てに及んでいるはず。
 しかし、それを一度で同時に若返りってのは、手間も費用も大変な事になる。
 そこで、優先順位を付けて機会をとらえて一つずつでもいい。
 今回は、エンジンのタイミングチェーンとかヘッドまわりの音が大きくなっていました。
 その為、テンショナー交換とヘッドOH(オーバーホール)は、必至。
 もしかしたら、シリンダー、ピストン(腰上)、或いはチェーン交換、クランクまわり(腰下)まで?
 というような事で、近いうちの別機会に先送り〜って事になりました。
 それで、プラグ交換、圧縮測定、エキゾーストフランジ排気漏れ修理、キャブレターバランス調整って程度。
 何か2度手間って感じるかもしれませんが、この程度ならいたって簡単ですよね〜!?
 そして、駆動系にも関連するクラッチOH!
 距離が距離なんで、確実に消耗しているハズ〜〜ですが、これは、テクニックに大きく左右されますよ!
 そういった感じで、残された足まわりがメインディッシュって事になるんでしょうか?
 徹底的には程遠いけど、ちょっとした作業で随分変わるって感じの手入れです〜
 言いかえれば、自己満足度がかなり高いって‥‥‥
 でも、本当の若返りには、まだまだエステサロンの扉を開けた程度だって、忘れないで〜!
 
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フロントフォーク

フロントキャリパー

リアキャリパー

マフラー

クラッチ

  
テーマ
写真 内容
 フロントフォークOH

ボトムボルトを緩める際の
回り止めは、丸棒でOK!
 
フロントフォークを修理する機会って、大体がオイル漏れ。
でも、オイルが漏れてなければ、イコール正常とは言えませんよね?
とにかく、インナーとアウターが常にこすれ合って伸縮しているんだし〜
だから、頻繁にOH(オーバーホール)するのが趣味でない限りは、たとえオイル漏れであっても、同時に消耗品を交換しよう!

そもそも、オイルが漏れるのも、単純にオイルシールのリップ(余分なオイルをかきとる部分)の磨耗や劣化だけではないはず。
インナーとアウターがスライドする部分に取付けてある、メタルの消耗も影響しているはず。
メタルが磨耗すれば、それだけフォークがたわみ(折れ)易くなり、リップの面圧にも影響があるだろうし。
もちろん、メタルは、何よりもスムーズな摺動を回復させる為に交換するのだけど‥‥‥
 
これが外れる

これが左のインナー内に入っている
上は、取り外したボトムボルト



オイルは、そのまま捨てずに
集めて量や沈殿物を点検する
 
で、作業について
オイル交換だけでなくて、オイルシールやメタルを交換しようとすると、ここまで分解しないと出来ません。
まずフォーク単品が取り外せたら、次に、フォークのキャップボルトを外して、ワッシャーやスプリングを引き出す。
キャップボルトは、フォークを外す前にひと緩めしている方が後で楽。
フォークを傾け、中のオイルを缶やカップなどに受けて量がわかるようにしておく。
この後、分解を進める中で出てくるオイルも一緒に受けるようにする。
それによって、大雑把ではあるけど、元の悪さ加減も把握出来るってわけ!
オイルが汚いのは見てのとおりだけど、油量については、ある程度正確に回収しないとわからないから。
ダストシールをマイナスドライバー等で注意しながら外す。
注意しながらってのは、インナーを傷つけたり指を突いたりしないようにって事。
次にクリップを外して、反対側の底にあるボトムボルトを外せば、インナーを抜き取る事が出来るって具合。
 
消耗品は交換

アップ写真へ
 
抜き取り方は、そのままインナーをカツンカツンと勢いをつけて引っ張ればスポッと抜けてくる。

それが写真の状態。
インナーの先に引っかかって、右端のがオイルシール。
次の茶色のが、アウターケース(シリンダー)上部にはまっているメタル。
その次のガンメタ色のは、インナー先端にはまっているメタル。
それらを交換します。
あと、各スプリングの自由長とかは測ってみてね〜
 
シリンダーも点検 忘れてならないのが、シリンダー内部!
大きな傷とかは、そうは無いと思うんだけど、沈殿物がドッサリってのは良くあるから〜
綺麗に洗浄後 パーツクリーナー等をスプレーしても、底までは中々綺麗に出来ません。
最後は、ねじりウエスを突っ込むなりして、粘りつく沈殿物を拭き取ります。
これが純正オイルの色

オイル量は正確に!
カワサキサイトで
サービスデータの
検索が出来る
 
組付け時には、オイルシールとダストシールのリップ部にシリコングリス(チューブ入り)をしっかり塗ります。
メタルにはモリブデングリスを塗り、ボトムボルトには、ネジロックを塗ります。

組み付けが出来れば、いよいよオイル。
スプリングを中に入れない状態で、規定量より少し少な目に計量したオイルを注ぎ込みます。
ところで、これがカワサキ純正フォークオイルの色です。
他に、カヤバとかモチュールとかも使うけど‥‥‥
いずれであれ、上の写真のオイルの状態は、かなり水を含んで白濁している感じ。
オイルを入れたら、インナーチューブをゆっくりと数回フルストロークさせてエア抜きをする。
そして、いよいよ油面調整。
フルに圧縮させた状態で、インナーチューブ天辺から油面までの高さを測ります。
規定値になるようオイルラッパやスポイト等で補充して出来上がり。
この後、スプリングやワッシャー、スペーサーを組付けキャップボルトを締めれば完成!
今回、スプリング自由長がわずかに短くなっていた為、ワッシャーを1枚追加。
元々の1枚は、スプリングとスペーサー間のシート的な役目だけど、2枚目はイニシャルセット荷重の回復って意味。
キャップボルトのOリングには、交換時にシリコングリスをしっかりと塗り、よじれは直しておく。
油断すると、スプリングを押しながらの締め込みだから、Oリングをかみ込ます可能性も無いとは言えないでしょ!
 
  
写真が少ない事もあって、手順書にはなってません〜
それだけ、夢中じゃなくてカメラを握りたくなかったわけ!
‥‥‥そうです、 素手素手、両手ともオイルまみれ〜!
軍手なんかはいてたら、こんな作業は出来ませんよ〜
で、機会があれば正立フォークを再度取り上げてみるつもり。
  


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テーマ
写真 内容
 
 Fブレーキパッド交換


ピストンを余分に出して綺麗に



パッドをセットしてからもポイントが
 
6個も磨くわけって、6個も汚れていたら〜?
ハイ、ピストンを6個磨いたところです。
もとの状態はこちら

ディスクパッドが消耗するにつれ、ピストンのゼロ(働いてない状態)位置が出てきた状態になるのは、既にお分かり済み〜
それで、ピストンの出てきている部分が使用中に汚れるって事です。
その為、新しいパッドに交換すると、元より厚みが増して、その分ピストンに戻ってもらわないといけない。
で、汚いままでは、お戻り頂けないでしょってワケ!

作業のポイントは、歯磨きと同じ!
裏側や歯と歯の隙間、歯茎との境を重点的に〜?
もちろん、歯っていうのはピストンの事。
で、歯茎はキャリパーボディー。
そして、磨く際には、ちょっと歯を伸ばして境目を攻める〜?
ってワザは、ピストンでしか出来ません〜
出過ぎたまねをするピストンを押さえながら、6個全部が少し出るまで、ブレーキレバーを握って油圧をかけます。
油断してるとピストンがポロンと取れて、フルードがジャーって。
そうなると、エア抜きの手間が増えちゃう〜!
だから、この作業は、左右どちらか片方のキャリパーから、1ヶ所ずつ分解組付けをしましょう。
出方の悪かった分は、よく憶えておいて、後でおしおき〜じゃなくて、掃除とウオーミングアップを念入りに〜

歯磨き粉は、ブレーキクリーナーで、ブラシは、マジ歯ブラシとか、汚れが硬ければ真ちゅうブラシで。
終わったら、シリコンスプレーグリスを一吹きが便利。
シュワーと泡が落ち着いたら、ピストンを手で押し込みます。
モグラたたきのように、あっちを押したらこっちがまた出たってやってたら、ピストンのウオーミングアップにもなるわけ。
心配せずとも、その内に全部引っ込むから〜!

この作業では、フルードがリザーバに逆流するから、当然、溢れることもあるので注意。
 
きちんとセンター出し  
ピストンを綺麗にし過ぎると、ピストンが戻りすぎてスポンジーやストロークが増えるって聞きません?
もちろん、エア抜き等は問題ないとしてです。

でも、それは引きずり気味の方が、カッチリしているとか、効きが早いっていう意味でしょ?
そのまま、受け取るわけにはいかないようです。

動きの良いシールとピストンに、戻り過ぎって事は、ありえないわけで、むしろ渋っている方が何かの要因で戻され過ぎって事になるわけ!
それは、プレートの変形や足回りの振動や変形で起こり得るって。

ピストンのウオーミングアップが出来てると、スパッとセンターが出ちゃいます!

最後に、念の為エア抜きをしながら、リザーバのレベル調整が出来ればさらにグッド!
 
 出来上がり  
 ブレーキまわりは、他の事例もご参考に!

ウオーミングアップ、センター出しについては、
 こちら → ガンマの事例

エア抜き、ディスクブレーキの作動については、
 こちら → ガンマのブレーキ編

キャリパーオーバーホールについては、
 こちら → TZRのキャリパーOH
 


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テーマ
写真 内容
 リヤキャリパーOH

アップ写真へ
 
キャリパーOHは、見飽きたって?
そうですね!
機種が変わってもやる事は似たようなもの〜
でも、この事例は、疑わしきはOH!って感じの例かな。

パッド残量は、充分あるんですが、前後同時交換って事で作業を進めていた時の事です。
そんな中で、
ディスクパッドを交換しようとして、汚れ具合がおかしいなと思ったら、そのままにしないで〜
例えば、湿っているとか、金属粉がキラキラやたらと多いとか。

この場合は、湿っていたわけだけど、雨降りの後ってわけじゃないよ、念の為。
 
この汚れは?

アップ写真へ
 
よくわかるように、パッドを外してピストン付近を点検。
グリスの付け過ぎか、それとも、シールからフルードのにじみがあるのか?
どちらにしても、綺麗にはしないといけないんで、ピストンを出してみます。
 
真ん中にある十字模様の入った物は、フィーリングブロックって樹脂で出来てる詰め物です。
ブレーキ鳴きや断熱に効果があるみたい。
なぜ説明するかと言うと、また後で出てくるから
 
ダストシールが‥‥  
ピストンを出している時、ダストシールが引きずられて出て来てしまいました〜!
やっぱり、ピストンとシール接触面が良い状態ではなかったわけです。
内部の汚れがシール類に影響を与えているって事は、外部の汚れをそのまま押し戻すのは、もってのほかって事になるよ!
 
汚れがくせもの  
こうなると、もはやオーバーホールをするしかありません。
でも、掃除してもう一度組付けるってのも有りですが‥‥‥

でも、ついでの作業だし、まして走行距離が距離だから、当然部品を手配です〜
グリス?  
こうやって、カスがいっぱい溜まっているんですが、フルードのカスだけでもないような?
妙に白くて綺麗のが、ピストンやシリンダーにボロボロと。
何となく、グリスが劣化して固化したような感じでもあります。

で、予定外だった為、掃除後暫し中断です。
フルードでまわりを汚さないように、パーツが埃をかぶらないように養生しないと。
 
大げさな交換部品  
バイクの場合、交換部品は、単品で拾い出さないといけないので、ちと面倒です〜

その結果が、これ!
一つずつ梱包されているのは、仕方ないとして、バラバラじゃ入荷チェックも大変だろうし?
キャリパーシールキットとかにセッティング出来ないのかな〜?
 
念のために  
そうそう忘れていてはいけません!
ビニールを破る前に、念のための確認!

こんなんでわかるのってとこですが、これが返品交換出来るかどうかの最後の砦です〜

特にフロントの場合は、異径ピストンタイプなら大小2サイズ間違いないかとか、ピストンの数量分あるかとか、よく確認してから作業をスタートしないと2度手間になっちゃう。
 
付属のシールグリス  
こんなに量があるんで、そこらじゅうに塗らないといけないと思ってしまわない?

ピストンに薄く、そしてダストシールとピストンシールの全体に指先でクチュクチュと塗ると、使う量は1/3ぐらい。
余りは、保管してもいいし、スライドピンのブーツ交換時のグリス交換に使ってもいい。
ただ、パッド周辺には耐熱性が劣るので使えません。
 
シールの組付け 手前がダストシールで奥がピストンシール

はめ終わったら、ねじれがないか、確認の意味で指先でスーッと一通りなぞって落ち着かせます。
ピストンの組付け  
斜めにこじないよう、ピストンを両手で真っ直ぐ押し込めば出来上がり。
入れる向きはこのとおり、この凹みにフィーリングブロックをいれます。

あまり関係ないけど、どうせならピストン内面も綺麗にしようね!

これで、取付け後にエア抜き作業をすればOK

エア抜き作業については
 こちら → ガンマのブレーキ編
 出来上がり 片側にしかピストンがないフローティングキャリパーでは、シリンダー側本体がスムーズにスライド出来ないとダメ。
その為、スライドピンの清掃やグリス交換、ブーツ交換を同時にやった方がいいネ。
ブーツ代なんてとっても安いし、同時に注文しておくだけの手間です。

これでリアキャリパーは、新品同様〜!

パッドの色つき背板は、アピールするね!

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