事例紹介
 
 
  
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ブレーキキャリパーのOH
  
キャリパーのオーバーホール(OH)は、ブレーキフルードの洩れは当然として、ピストンの動きにバラツキが大きい場合にも行います。
どれくらいのバラツキって、指でスーと押し戻せるものと、ウオーターポンププライヤでムギュー位の差です。

キャリパーのピストンは、ディスクパッドが消耗してもレバーのストローク(握り代)が増える事はありません。 
その理由は、パッドがすり減って薄くなった分だけ、ピストンが押し出た位置で待機(ニュートラルポジション)するからです。 
(マスターシリンダータンクのフルードレベルが下がる事でもわかりますよね?) 
その為、ピストンの露出部分は磨耗粉などで汚れる事になります。 
そこで、ディスクパッド交換時には、ピストン露出部をクリーニングした上で、押し戻す必要があります。 
そうしないと、汚れをシール部に噛み込む事になります。 
それが原因で洩れ出す事もあるでしょうし、ピストンの動きが悪くなったりもします。 
それさえ注意しておれば、オーバーホール作業までする機会は少ないといえます。 

ところが、この事例では、ダストシールの一部が剥離するなど、ラバーの劣化が進んでいました。 
その為、得意のウオーミングアップでは、完全な動きに回復させれませんでした。
バラツキといっても、初期タッチで差が出るかどうかの細かな問題ですが、車齢からしてメンテナンスは無駄にはなりません。
何よりブレーキですから安心感が違います。
  
 ウオーミングアップについては、こちらを参考に 
 

キャリパーの取外し  
作業は左右同時ではなく、どちらか片方から1ケ所ずつ済ませます。
  
キャリパー取付けボルト2本を外します。 
取付時には、トルクレンチを用いて規定トルクで締めます。 
 
使用パーツと消耗品     
純正パーツのシールキットは、サイクルワールドで取り寄せてもらいました。

ブレーキフルードは、ドット4なら何でもいいんですが、モチュールを奢っています〜

パッドの取外し  

ディスクパッドセットピンの脱落止めクリップを外し、六角レンチで外します。
 

セットピンを外したところ これでパッドはフリーです。
取外したパーツ これが片方のキャリパー1個分のパーツです。
セットピンの横に小さな抜け止めピンが見えます。
ピストンが見えます 異径対向4ピストンが見えます。
4個とも出てきました  
このように均等に出てくると、どれから外していいやら?
また、タンクのレベルが下がってエアを吸うかもしれません。

ピストンの取外しは、この程度出てきた状態でも手やツールで外す事は出来ません。
エアツールで吹き出せない場合は、ブレーキレバーを握って油圧で押し出すのが簡単です。
その為には、油圧ラインにエアを出来るだけ吸わさない事が大切。
そして、ピストン1ケ所ずつ交換し、手間ですがその都度エア抜きをしておきます。
そうすれば、ピストンを順番に油圧で押し出して作業が出来ます。
エア抜きをする時には、ピストンの間に木切れ等をはさんで、ピストンが飛び出さないようにします。
 

ピストンが外れた様子  
レバーを繰り返し握っていくと、少しずつピストンが出てきます。
これが、左上の大きい方のピストン1個の全体が出た状態です。

結構長いというか、シリンダーの深さとほぼ同じというか、摘んで取りだせないのがわかりますよね?
同時に、フルードがタラ〜とこぼれます。
フルードは塗装の大敵(溶かす)ですから充分注意します。
もし、塗装面に付いた場合には、すぐに水で洗い流します。

この時、既に作業済みとかで出て欲しくないピストンは、やはり木切れ等で出ないようにしておきます。
 

シールキットの内容   
これは、大きいピストン用2個分のキットです。 
これで1セットになっています。 
TZRは、ダブルディスクの異径4ピストン対向式です。 
その為、全体としては、大きい分が2セット、小さい分も2セット必要です。 
太い方がピストンシールで、細い方はダストシール 
赤いグリスは、シールに塗る専用グリスです。 

シールに向きは有りませんので、ゴミを付けないようにグリスを全体に塗って準備完了です。 
 

これがピストンの形   
取外した大きい方のピストンです。 
ピストンは真ん中が凹んでいて、というより蓋のない缶といった形です。 

この中空な側にディスクパッドの背板が触れるわけです。 
パッドとの接点を小さくする事で、ブレーキフルードへの熱伝導を緩らげているわけです。 

ピストンには、汚れが付着していますので、傷を付けないように掃除します。 
紙ヤスリを使用する場合は、1000番〜さらに細かい物にします。 
掃除後は、やはり、ゴミが付かないように薄くグリスを塗っておきます。 
 

シリンダーとシールの様子   
ブレーキフルードは、古くなると色が濃くなります。 

シールは、シリンダー内面の溝に張付くようにピタッとはまっています。 

手前(パッドに近い方)が、ダストシールで奥がピストンシールです。 
 

シールの取外し   
ピックアップツールがあればいいんですが、小さなマイナスドライバーで出来ます。 
シールの際に狙いを定めて、クイッと。 
溝に差し込めたら、後はそ〜っと持ち上げて。 

適当にやってシリンダーに傷を付けないように。 
 

綺麗に掃除します   
10年選手でこんな状態ですから、ウエスでこする程度で綺麗になるのでは? 
ウエスは、繊維の取れないナイロン生地等が適しています。 

しつこいこびりつきは、小さいドライバー等で軽くシコシコとやります。 
掃除の後は、ブレーキフルードですすぎます。 
 

新しいシールをはめます   
ちょっと狭くて、太い指ではやりにくいところです。 

とにかく円状の一部を溝に入れて、指でしっかりと保持します。 
残りの指で、はまっていない部分を溝の方に案内すると、クルッと入ります。 

これを両手でするか、片手でするかはしやすい方で。 
 

ピストンをはめます   
ピストンは、シリンダーに両手の親指で押込みます。 

ちょっときついですが、シリンダーに平行にしてグッと力を入れます。 
とっかかりが入れば、後はスーと楽に動いて正解! 

ここまでの作業は、手際良くしないとマスターシリンダーのタンクが空になってしまいます。 
1ケ所の作業が出来るとエア抜きをして、次のピストンを外します。

全部出来れば、ピストンを奥に戻してディスクパッドを組み付けます。
組付け後に、再度しっかりと左右のエア抜きをして完了です。

 エア抜き作業についてはこちらを参考に
 



 あると便利なツール
  
これは、マイティーバックという吸引ポンプです。 
各種バキュームデバイス(負圧装置)の作動をこのポンプで発生させる負圧で作動チェック出来ます。 
また、少し違った使用法として、油圧ラインのエア抜き作業があります。
その為、ワンマンブリーダーとも呼ばれています。

今回の作業では、エアツールが使用出来ると、左右キャリパーを取外し、単体で効率良く行えます。
ホース取付穴からエアブローでピストンを押し出せるからです。
ただそのように作業した場合には、油圧ラインに多量のエアが残る為、通常のエア抜き作業ではまったく回復しない事があります。
他に、ブレーキホースを取替えたような時でも同様に多量のエアが手こずらせます。
こんな時に、これの出番です!
エアブリーダープラグを緩めて、ホースを差します。
レバーをペコペコペコペコ
箸でも棒でも動かなかったエアが、ポコポコ出てきます。
本当に1日やっても抜けないんじゃないか?
と思えるのが、ものの2〜3分あれば。
この差は大違いですよ!

滅多にない事で買ってられない〜!
という事で、作業中は、フルードが垂れて大変ですけど、タンクのフルードは切らさず、1ケ所毎にエア抜きが無難です。
  

 
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