事例紹介 |
パーツの手配は、残念にも閉鎖されたカワサキプラザに直接注文。 後日、引取りついでに、新型車や歴史上の名車達と戯れたのは言うに及ばず‥‥‥それにしても残念! 聖地たる明石に、販売店を含めてさえ、ユーザーフレンドリーな場所が無いのは如何なものか?(余談) 補修パーツを受取り、早速に分解を始めるのだが‥‥‥ いきなり、インパクトレンチでバリバリッ、ってやるには訳が〜? 実は、ボトムボルトの頭が半分程舐めてしまっている〜! ボトムボルトは、キャップボルトと呼ばれる六角の凹に六角レンチを掛けるタイプ。 その掛かり代である深さの半分程が舐めている。 しかも、2本共〜! 恐らく、本体をしっかりと固定出来ずに、中途半端な力加減で緩めようとしたのだろう。 と言う訳で、同じ轍を踏まないように、一瞬のインパクトパワーに委ねたって事。 もちろん、新品ボルトを銅パッキンと共に手配済み〜 |
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レンチのセンターをぶらさずにガツンとやれば、キチンと緩みます。 一緩み後は、手作業で慎重に外すと同時に、フォークオイルがダラ〜 フォークオイルは、現状把握で重要なデータを提供してくれる貴重な資料。 だから、一滴も溢さずにオイル受けに回収する。 |
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インパクトついでに、トップキャップも一緩め。 この場合こそ、シリンダーをバイスで固定するのが面倒というもの。 強く挟むと真円が変形しかねないし、かと言って、傷付け防止でラバーをかましているから、ある程度圧力を加えないと滑ってしまうし〜 そう考えると便利な物です〜! ただし、ピッチも細かいアルミネジだから(双方共)、一緩め以上は出来ません。 もちろん、締付時は、最初から最後まで手締めと言う事。 特に、トップキャップは、Oリングを傷付けない様に細心の注意を払う必要がある。 |
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トップキャップとフォークシリンダーセット(ピストン、カートリッジ部)が、一体で外れ、アウター、インナーのチューブと合わせて3ピースに分解されました。 | |
分解された3ピースの中で、まずは、アウターチューブのオイルシールとダストシール、ストッパーリングを交換しておく。 |
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次に、ピストン、カートリッジ部の分解になるところで、一問題発生! それは、自家製スプリングコンプレッサーでスプリングを圧縮して、スペーサーに隠れたナットを緩めるつもりが〜 ちょっと、パワーが足りない〜! ギューと押し下げて、スペーサーの中から顔を出したナットの下にすかさず自家製ストッパーを差し込む。 たったそれだけの事が、あとわずかなところで出来ない〜! 正確には、一人でやろうとしているから。 両手で押し下げた後に、一瞬の保持を片手で出来ないとストッパーを差し込む為の手が無い。 筋肉がプルプルって〜 (^_^; これまで、ミドルクラスは言うまでもなく、7RRまでは素手で押し縮めてこれたのに‥‥‥ 12Rのセット荷重は、やはり大きかった〜!! そこで、自家製スプリングコンプレッサーを油圧プレスで押せるようにバージョンアップ! 写真のコの字型をした銀色の部分が追加部分。 取外し式だから、外せば元どおりの手押しバージョンとして使用可能。 |
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と言う訳で、油圧プレスで押すのだが〜 ピストン、カートリッジ部を安定させる為に、3ピースを仮組みしてセッティング。 慎重に押し下げていくのだが、案外、座り良く作業は進行。 コの字のプレートを幅広の建築金物で作っていたのが、正解だった様子。 |
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充分に押し下げた状態で、トップキャップを持ってピストンを引き上げ、ストッパーを噛ませる。 これで、油圧プレスの役目は終わり〜 この場合は、作業性に支障が出ない為、スプリングコンプレッサーを取外さずに作業を続行。 因みに、純正の特殊工具は、プレス使用が前提ではなく、ワイヤーを巻き取って自力で圧縮するタイプで、とても高そうです〜 |
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ピストンロッドの頂部に付くトップキャップは、その下部でロックナットによって固定されている。 ところが、そのロックナットが通常では、筒状のスプリングスペーサーの内部に隠れてしまって、レンチが掛けられない。 そこで、スペーサーをスプリングごと押し下げ、ナットを現す事でレンチを掛けれるようにしている。 写真の黒い板状の物がストッパー。 ナットの下側で、U字形の切り欠きをピストンロッドに差込む事で、トップキャップから手を離してもピストンが沈み込まなくなる。 これでようやく、ロックナットとトップキャップ、それぞれにレンチを掛けて緩める事が出来る。 |
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取外したトップキャップ。 Oリングは、忘れない内に新品と取替えるが、シリコングリスをタップリと塗った上で、鋭利なネジ部で傷付けないように注意する。 尚、シリコングリスは、チューブタイプの物であって、スプレータイプは不可。 |
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トップキャップを外した後のピストンロッド先端に、持ち手代わりとして適当なボルトをセットしておく。 これは、後のエア抜き作業時等に必要となる事。 |
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1本の分解作業で出たオイルは、最終的に計量カップに全て回収。 同時に、沈殿物等の種類や量を把握する。 こういった作業は、作業性や作業時間においては、マイナス面ばかり。 しかし、ワンパターンで消耗品を交換しているだけでは、本当のメンテナンスとは言えない。 どのような金属粉(材質だけでなく粒度、形状、量等)が沈殿し、残っていたオイルの質と量はどうであったか? その情報が、各部の計測値と共にサービスデータと照らし合わせて、状態が考察される。 本来であれば、これに加えて、使用者並びにマシンの状況、そして、使用状況が加味されて、よりトータルに判断される。 逆に言えば、その部分が無いだけに、より探究心を持ってシビアに現物と接する事で、真の状態を把握しようと努めている。 |
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写真右の薄黄色をしたオイルが、規定量の新品カートリッジ用オイル。 それと比べて、使用分はかなり黒く変色! 量的には、少し減っている程度と言うか、回収の限界に迫るぐらいまで集められて良好な部類。 性状的には、モリブデングリスが溶け込んでいる点を差し引いても、かなりの劣化であり、元々が赤色系だったか何色系だったか、当然わからない。 知る限りでは、青系は有っても黒系は有りませんので〜(笑) とにかく、タップリとアルミ等の粉末を含んだ溶液状態で沈殿物も多い。 このような状態が、左右2本に共通して見られた。 以上から、比較的短期間に走行距離が伸び、尚且つ、それなりの走りを経験しているが、問題のない消耗劣化と言えそう。 ただし、分解の都度、劣化の如何に関らず、シールやパッキン関連の消耗品を交換するのは、コストを考えても正しい選択って事。 |
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分解された構成部品は、清浄なステンレスバット内で管理。 しっかりとオイルを回収後、順番に点検計測する。 その後、オイル回収の終わったパーツ類をしっかりと洗浄し、消耗品を交換。 懸案のカートリッジ部の偏磨耗、キズ等の外観上の異状や摺動具合も問題なし。 金属摺動部には、モリブデングリス、シール類リップ部にはシリコングリスを塗布して組付け。 仮に交換となれば、パーツの単品設定が無く、A’ssy交換で大きな出費となるところ〜 (^^)v 今回は、これでOK〜! 次回OH時まで、綺麗なオイルで、スムーズに作動してもらいましょう! |
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組上がったフォークは、ゆっくりとピストンを上下させ、エア抜きを実施。 ストロークさせる回数は、数回と言うよりも、エアが完全に抜けるまで! 垂直に立てて、オイルの抵抗を感じながら気が済むまで、じっくりと〜 空気は抜いても、気は抜かずに、最後の油面調整まで〜 写真は、エア抜き後に、スプリングとスプリングスペーサーをフォーク内に入れたところ。 説明が後になったけど、穴が見えるパイプがスペーサーで、その穴に自家製スプリングコンプレッサーを引っ掛けてスプリングを圧縮するわけ。 ボルトの頭が見えているのは、前述のピストンの持ち手として取付けた物。 |
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組付け時にも油圧プレスの力を借ります。 スプリングを圧縮し、持ち手のボルトでピストンを引き上げ、分解時同様にストッパーをセット。 持ち手のボルトを外した後に、新品Oリングを組んだトップキャップを取付けロックナットを忘れずに締める。 最後に、スプリングコンプレッサーを取外して、トップキャップ(雄ネジ側)をアウターチューブ(雌ネジ側)にねじ込めば完成〜! 手で押せるかって? この場合は、アウターチューブを引き寄せながら、トップキャップを少し押し込めばチューブに当たるぐらい。 それで、グッと瞬発力で当たるまで押して、当たると同時に右に回せばネジ山が掛かる。 確実に掛かっていたら、再度押し気味に回して、手で締まる限りを締める。 続きは、レンチで締める事になるが、この際、Oリングが無理なくチューブ内に入るように注意を払わなければならない。 Oリングには、組付け時にタップリとシリコングリスを塗ってあったとしても、噛まない保証はないから。 これで、ようやく左右フロントフォークが用意出来たって事〜! |
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