事例紹介
 
TryR2の領域を広げるワークス【T.W.J.】
(TryR2についてはこちらへ)

 
 事例紹介に入る前に少し‥‥‥
 溶接と一口に言っても色んな種類が有ります。
 その中で、精密な溶接作業が出来るものとしては、一番にTIG(ティグ)溶接があげられます。
 その名のとおり、TIG溶接機を用いる溶接法なわけですが、アルミを溶接出来るタイプという事で知られています。
 機械については、こちらに書いていますが、それ以上に重要な事は溶接士の技量でしょう。
 今回の事例では、それらの揃った恵まれた環境にて、通常なら廃棄となるお値打ちパーツが甦りました。
 「何もそこまでしなくても〜?」 確かにネットオークションを探せば適当な値段で有るかもしれません。
 しかし、仮にそれが元と同じタイプであれば、何ら解決にはなっていないわけです!
 一旦、生じた不具合を修理し、同時に再発しないように手立てを講じる。
 それこそが、TryR2の真骨頂!(すべて、そう出来るわけではないけど‥‥‥)
 DIYの価値観が「安ければ良い」と考えるのは、=「自己満足な結果が得られるだけ」
 であって、必ず本質的な要求は満足させなければDの意味が無い!
 だから、時には、材料も手間も過剰と思える場合があるかもしれません。
 でも、逆に、美観的な事やブランド等の機能以外の部分については、無頓着であったり。
 決して、打算的ではなく、そんな感じで案外バランスが取れていたりします。
 無駄や過剰な”イジリ”と言うのではなく、シンプルだけど、機能的、合理的に必要な手入れは惜しまないのが、TryR2! 

 

  
テーマ
写真 内容
  
 エキパイの修理


ジャッキアップするとブラインド部分で、エキパイが脱落。
パイプ状クロスメンバーに引っ掛かっている〜
「良くぞ引っ掛かってくれました〜!」

でも、こんな所に継ぎ目は有ったかな〜それとも‥‥‥?
  
エキパイ(エグゾーストパイプ)の修理と言えば、排気漏れでバリバリッとか、ドロドロと爆音のイメージがあります。
ところが、それは最終段階の話では正しいけれど‥‥?
と言うのは、元々がスポーツマフラー等の少し元気な排気音だった場合。
初期の漏れ(ビシビシ言ってるハズ〜)が、全体の騒音で掻き消されて気付かないケースが有るようです。

「最近、アイドリング時の振動が大きくなっているみたい〜!」
 
と、相談されれば、まず一番に燃料、次に点火系へと疑っていくのが普通では?
特に、最近の巷では、粗悪ガソリンの気配がプンプン?
アイドリングという中で、燃焼の良否の差が顕著に現れた?(顕在化と書きたいところ〜否、書いてましたっけ?)

異質な燃料で学習制御とのズレが生じたとか、エアホースの破れ、バキュームホースの抜け、ベースアイドルの再調整といった吸気燃料系から
プラグ、プラグコード、イグナイターといった点火系へ疑いを進めたわけですが‥‥‥

「どこも悪い部分が無いし、何をやっても変わらへ〜ん!」

う〜ん、そんなハズは無いねんけどな〜?
 
「別に乗れなくないんで、もう少し様子見ときますワ〜」
「また、次の週末にでも、ちょっと見てもらえますか〜?」

 
そんなやりとりが終わって、ほんの数時間!

「今さっき、走行中に決定的な事が起こって、ガタガタ異音が出ながら爆音発しています〜!」

そうか〜それエキパイのどこか外れてるワ〜!!
 

エンジンルームで  
このタコ足タイプは、ノーマルでは無いわけね〜!
という事で、スペシャル事例となりました〜
この経験を得られるのは、スペシャルなオーナーだけ!

ってわけでも、誰もそれは望んでおりませんから〜

しかし、作業をするこちらとしては、作業性良さそうな〜?

早速、エアクリーナーやエアフローメーター等のエンジン左サイド周りの部品を取外して、作業開始〜
エキマニのフランジ部取り外しには、T形ユニバーサルレンチが活躍。
ほとんどのナットにアプローチ出来たから作業が早い!
フェンダーには、傷付け防止カバーを敷いています。
 
シンプルです〜 下側では、触媒との継ぎ目を外します。
それと、忘れてならないのが、ヘッド後部に有るО2センサーのカプラーを切り離す
以上で外れたエキパイは、エンジンルーム側へ慎重に取り出します。

エキパイが無くなりスッキリしたエンジンサイドです。
この機会に、ロアホース取替え等のメンテナンスもお薦めですね〜♪
真っ二つ〜!  
取り出したエキパイの全景です。
写真右端が触媒との接続部で、左端はエンジン側。
その調度、中間付近の4イン2イン》 《の部分で割れています〜!
割れた部分の後ろには、振動吸収の蛇腹メッシュ(ブレの様な低周波大振幅用)が有るのに〜?

どうも、2イン1の集合部の形状がスムーズでなく、2本のパイプと1本のパイプが動的な部分で一体化の不足って感じ〜?(注)
形状によっては、また違った結果になっていたのでは?

素材のステンレスは、強度も有って腐蝕にも強い。
しかし、溶接部は変性したり欠陥も生じやすいから補強を入れておくに越した事はないはず。
しかも、この部分は、ノーマルならクラッチハウジングへのブラケットが有るのに、これは省略されている‥‥‥?
 
(注)排気の流れの良否という部分ではなく、エキパイの強度的な問題。腸詰ウインナーのように絞られた集合部が、剛性面の連続性を阻害しているのは明らか。
 
集合部でビシッ!

 
割れは、随分以前から進んでいたようで、この度の綺麗な割れ面は、僅か1cm程でした〜!
破断面のカーボンからして、もっと早く気付けた可能性は有ったって事?(ジャ〜ン)
破損は、溶接ビード部の際でクラックが走ったり、ビード部が脱落したりしています。
かといって、写真でも分かる様に、溶接不良って雰囲気ではありません!
そこで、考えられる原因としては〜?
高周波のエキパイ振動によるパイプの共振。
繰り返される熱収縮による疲労や熱膨張による応力の集中。

まあ、その中のどれがって部分は、さらに詳しく調べないと何とも‥‥‥

まあ、製造元ではないので勘弁してもらって、先に進めました〜♪
とはいえ、こういった考察は修理の可否って判断にとても重要な部分です!

幸い、割れ口を合わせてみると、元の位置関係が判明しました。
これなら、うまく修理すれば、角度違わず元通りに組付け出来るようになるかもしれません。
ただ、大きな穴も開いていますし、細かなクラックで脆くなって、さらに取れそうな部分も有ります。
しかし、それらは、破壊された周辺の極狭い範囲です。

やはり、この部分の構造上の問題、或いは、全体の中で弱い部分となっていたと考えて良いはず〜
また、腐蝕についても表面的であって、全体としてSUS(ステンレス)の強度は期待出来る状態。
多少は、内壁の消耗もあるだろうけど‥‥‥
こりゃあ、わけのわからん中古を買うよりも直した方がグ〜!
 
まずは位置合わせ  
修理の方法は、もちろん、溶接!
こんな破断した場合では、他の方法はありません。
しかも、TIG溶接で薄いパイプ素材ながらも完全にステン地金一体化を目指します。

果たして、匠は、新品からでも破損した溶接部の強度を高め、元以上の品質に出来るのでしょうか?

修理箇所全体をディスクペーパーで磨いて、綺麗な地金を出します。

そして、位置合わせが出来る内に、点付けで仮付けしておきます。
破断面は、その後に出来るだけ綺麗に手作業で磨く事とします。
 
TIG溶接の出番!!  
ここからは、T.W.J.とのコラボレーション!

ピーーー、ピキピキ、チュー、高周波な音と共に緻密な溶接作業が施されていく。

少しずつ少しずつ、慎重に且つ丁寧に〜
その間、手先に全神経を集中し、脇見はもちろん、呼吸さえ整えてなされている〜
〜と感じた次第(^^)

で、ちゃんとパイプを支えたり、呼吸を合わせて回転させたり‥‥‥写真も撮ってました〜
 
穴も埋めます〜

これは、欠損部と別に薄くなっていた部分が、トーチで溶かされた穴です。
仮付けで固定後に、打音で頼りない部分について、トーチをバーナー状にして炙って(あぶって)みました。

結果、いつもながら、穴埋めで苦労させてしまいました。
写真は、正に穴が完全に塞がった瞬間です!
アフターブローを終えたところで、この1秒後には、冷えて真っ黒になっています。

欠損部も含めて、大変な手間を緊張の中で完璧にこなしてもらいました〜! m(_)m
板を当てれば簡単かもしれませんが、強度にムラが有るとそれこそ、破損の起点になりますから〜
下地調整?

完全に隙間無く溶接が出来たところで、表面を削って綺麗に均します。
その中で、穴が開いた部分は、再度溶接で埋め潰す事となります。
それを繰返して、平滑でしっかりと肉厚の有る補修が出来るわけ。
仕上げで磨かれた溶接部は、パイプ部と同じステンレスの輝きを放ち、継ぎ目無く一体化しています。

そして、それは元と同じ形状になっているわけだけど、これは、まだ下地段階。

補修箇所に全くの欠陥が無いとは言えないし、高級な検査、試験も出来ません。
ましてや、新品でも破損した厳しい条件です!

その為、種々のリスクを考え補強をするのは当然の策。
元より強く!



下地段階で完全一体となった溶接部に、ステンレス板で鉢巻を取付け補強を実施。

肉厚は0.5ミリとパイプより薄目の板で、補強に徹します。
溶接部全体をカバーする事で、溶接部に応力が集中しないように分散させます。
さらに、その外側で、溶接部前後を大きくバイパスさせるサスペンダーを追加
また、2本のパイプを連結する補強板も1ヶ所追加。
これらは、本体に無理を掛けずに振動を減衰させる目的

鉢巻とサスペンダーの2種類の補強によって、熱収縮割れ、高周波振動による共振割れのいずれにも対応している。
こんな感じ これで溶接作業は完了!
耐熱テーピング このグラスウールのテープは、結構いい値段がする物。

出来れば、無しで済ませたいところだけど、元との比較って事もあるし、一応復元。
正しい位置関係 取り外しの逆で、エンジンルームから差し込んで組付け。

最初に乗っかっていたパイプのメンバーとは、指1本程の隙間が出来ています。
付き物ですか〜?  
エキパイを取外す際に、触媒コンバーター側のスタッドボルトが数回転分抜けていました。

こういった場合、作業前に、出来るだけ早目にCRCをスプレーしておくとか、バーナーでナットを焼くとか対策が効果的です。
ところが、限られた時間でやるだけの事はやっていたのですが、何せ酷い焼付き!
無事に取外せたのを良しとせざるを得ません。

それで、お決まりのパターンで抜け出た分は、元に戻りません〜
恐らく、取れた錆が邪魔をするとか、ネジ山が損傷するとかによると思います。
仮に、全部抜け取れていたら、掃除やタップ修整もトライ出来るのですが‥‥‥
仕方なく、その長さ分は、ステンレスワッシャーの枚数を増やして対応です。
もちろん、組付け時には、スレッドコンパウンドを塗布

*スレッドコンパウンドは、ワコーズの耐熱グリスでネジの焼付防止に有効です。
 
 完成  
元通りに組付けて出来上がり〜!

果たして、思惑通りにオリジナル以上って結果をだせるのでしょうか〜!?

尚、ガスケット類は金属製でキズ、ヘタリも問題無く、そのまま再使用しています。

当然、アイドリングの乱れは無事に解決!
それにまして、以前と比べて随分静かになった気がする〜との感想です。

何より、この部分は大丈夫!
という箇所が徐々に増えていく事が、車を大切にするオーナーには嬉しいに違いない!!
と勝手に思っている次第〜♪

ワンオフ、ワンオフって好きな人が多いけど、本当に必要なのは、修理のワンオフと思うけど〜?
 
 
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