事例紹介
 
 
旧車的面手何為事例
 
 旧車と言うよりも名車と言った方がいいんでしょうね! 
 昭和47年式 CB750K2(K0〜K4と続く) 
 今でも多くのファンに愛されている国産マルチの先駆けです。 
 年式によってファンのこだわりはいろいろあるけど、空冷OHC4本マフラーの基本スタイルは変わりません。 
 
 ほぼ30年になろうかというこのバイク。 
 これまでの経緯はわかりませんが、とにかくこの姿で現役です! 
 機械は、動かしてこそ! 
 現役っていうかぎりは、ちょっと手入れしてあげるだけで「ぐ〜ん」と良くなるはずです。 
 でも、旧車ってちょっと触ったら、ポロッとか、パリッとか、ポキッとか、ビリッとか ‥‥‥‥ 
 やっぱり、現役っていう事だけが頼りです。 
 まさか、走り出したら煙りになるって事はないでしょう!? 

 

ちょっとエンジンの具合を‥‥   ブリッピングへ
 

  
 さすがは現役マシンだけあって、部品の脱落とか朽ち果てたパーツとかは見当たりません。 
 不動車のレストアではなく、実用車のメンテナンスって感じが成り立ちそうです。 
 でも、各部の錆びやこびり付いた汚れは当然いっぱい有ります。 
 各部の点検は、ある程度の錆や汚れを落とさないと見えて来ません。 

 その為、レストアではないけど、磨くって作業も必要となってきます。 
 まずは、全体を拭きながら目視点検です。 
 ウエスにCRCを含ませて、フレームからスポーク1本にいたるまで磨きます。 
 錆のひどい所は、紙ヤスリの200番ぐらいから1000番ぐらいを使い分けながら、しっかり落とします。 

 錆を落としながら、ウエスで磨き上げていくんです。 
 その中で、ガタや肉痩せの有無やクラック、ピンホール等が発生していないかが確認できます。 
 この事例は、時間を惜し気も無く使うレストアとは違います。 
 とにかく、実用上のメンテナンスです! 
 なんでもかんでも取外して磨くわけでは有りません! 
 もしそれをするなら、その為の準備が必要となります。 
 それは、作業時間はもちろん、取付部のパッキンであったり、ついでに取替えたい消耗品であったりです。 
 そこで、組付けられた状態で抜かり無くって事になります。 
 でも、この全体のチェックの中で結構綺麗になるはずです。 
 そして作業の終わりに、真鍮ブラシ、そしてマザーズやピカール等の研磨剤で仕上げればいいんです。 
 もしこれを機会に、もっと良くしたいとなったら ‥‥‥ 
 使用しながら無理なく、部分毎に手を入れていけばいいんです。
 
  

 
  
テーマ
写真 内容
 前編   
全体をみていく中で、まず一番に気になった(驚いた!)のがスロットル! 

とにかく回せない〜! 
普通の体力では3〜40度回すのが精一杯です。 
原因は、ワイヤーかリンクかスロットルバルブか? 

グリップラバーも捩れています。 
キャブレターの方を覗いてみると ‥‥‥、 
スロットルを無理に回そうとした時、キャブレター全体が引き上げられて、タンクに当たりそうになっている〜! 

早速、ここから始めましょう。 
 なんたって、片手ではエンジンを吹かせれないんですから! 
 

Gタンクの取外し   
ガソリンタンクを取外すと、しっかりしたパイプフレームが出て来ました。 
しかし、それ以外はいたってシンプル! 
タンクの取外しも、コックへのフューエルホース2本だけ! 
燃料計も付いていませんし、ブリーザーはキャップ部(傾ければキャップから燃料が溢れる)、コックもバキューム弁など付いていません。 

 本当はこれでいいんだよね〜! 
 

リンクを点検      
早速、スロットルワイヤーが掛かっているバタフライリンクを指で動かしてみます。 

ウグッ!? 

シュパッとフルストローク動くはずが、ごく僅かしか動きません! 
これは、キャブでんな! 
エアクリーナーを外して‥‥‥‥、ここでこれがまた外し易い! 
上下に分かれたケースの下側が蓋って事で、蝶ネジ2本で止まっています。 
それを外すとエレメントも一緒にポロッと 
  

こんな状態!
 
これが閉じている状態 
キャブレターの中に見えるのがスロットルバルブ。 
これがワイヤーを経てリンクで引き上げられます。 
そして、沢山の混合気がエンジンに吸われます。 
その結果、強い爆発力によって吹き上がるわけです。 
 
 
 
 
指でリンクをウグッ!と動かした状態 
ごく僅かしか開いていません! 
スロットルバルブや回りに汚れがこびりついています。 
  
 
 
 
 
 
良くなった!
 
洗浄後の状態 
スロットルバルブをキャブクリーナーで洗浄  
 
 
  
同じく指でリンクをシュパッと動かした状態 
スロットルバルブが軽く全開するようになりました。 
 
ここも忘れず   
キャブレターの頭の上のブーツの中 

シングルキャブであれば、ワイヤーで直接スロットルバルブを引っ張ります(強制開閉式の場合)。 

でも、4連キャブではリンクを使って、シンクロナイズした作動を軽く出来るようにしています。 
ワイヤーがバタフライリンクを引くことで、各キャブ上部のレバーがバルブを引き上げます。 
この部分は、レバーのカム面が滑りながらバルブを引き上げるようになっています。 

その為、洗浄後にシリコングリスを塗っておきます。 
 

ワイヤーへ給油   
スロットルワイヤーは、2本。 

開く側と戻す側の両方に給油します。 
外したワイヤーをグリップより高い位置に持ち上げて、隙間へスプレーグリスをシュー! 
これでは、回りに飛び散りますのでウエスでカバーしてシュー! 

自転車のブレーキワイヤーとかでよくやりました。 
でも、ウエスにしみ込む程には中に入ってくれません! 
それを効果的に出来るようにしたのが、ワイヤーインジェクターです。 
ウエスに替わって飛び散るのを防ぐだけではなく、スプレーで吹き込んだグリスの圧力をワイヤー内に導きます。 
その為、注入穴でシューとすれば、グリップからシューと霧状に出て来ます。 
これなら確実! 

それと、ワイヤーは取外した状態ではグリスが切れていても軽く動くものなので油断大敵!  
ところが、負荷(キャブレター)が加わるとグリス切れでは途端に重くなりますので、給油は大切です。  
ちなみに、取外していても重い場合は、ワイヤーの取り回しが悪くて曲がりがきつい場合。  
また、インナー(ワイヤー)やアウター(被覆)がすり減っている場合や、グリスが汚れたり固化している場合等が考えられます。 
 

点火プラグ点検   スパークプラグの取外しは、回りの砂等をエアガンで吹き飛ばしてからにします。 
エアガンが無ければ、細いホースを使って口で吹いても、しないよりはずっといいはず! 

スパークプラグは、シリンダー順に並べてわかるようにします。

焼け具合をチェック  

 プラグの清掃取付の注意 

清掃は、電極と碍子だけでなく、ネジ部も汚れを落として薄くモリブデングリスを塗っておきます。 
そして、忘れてならないのがヘッド側の当たり面! 
スラッジがこびりついています。 
溶剤を含ませたウエス等で拭き取ります。 

いよいよ取付け、潰さないようにしっかりと!? 
新品と使用品では、ガスケットの張りが異なるので一概には言えませんが‥‥‥ 
バカ力は論外、でもビビンチョもガス抜けが発生! 
新品ならガスケットの潰れ代の中でグニュッと、使用品(ガスケットがへたっている場合)であればレンチで軽く回してコツンと端まで当たってから、クッと締め足し。 
硬くなってからグイグイ回すと、ネジ山が潰れたりプラグを折ったりと大変な事になります。 

注意する点として、プラグレンチの外周がヘッドに触れて硬く感じる事が有ります。  
しっかり締めたつもりが、プラグキャップを差す時にグラグラだったって事はよくあります。 
 

   
右から1番2番3、4。 

しっかりと焼け具合を確認します。 
全体的には1と2に比べて3と4がくすぶりぎみ。 
2つのグループに色分けされます。 
2グループといえば、まず思い浮かぶのが点火系。 
でも、点火系のグループは1と4、2と3ですから、ちょっと疑問符? 
エンジンの温度条件で考えても、やっぱり、外側の2つ(1と4)と内側の2つ(2と3)。 
エンジン内部も排気系も独立しているわけですから、残るは吸気系か、たまたま揃っただけなのか? 

吸気系のキャブレターは、1と2、3と4がコンビにされて、その上で2グループが1つに同調されています。 
可能性としては、同調のズレが考えられます。 

それと個別の問題として、1番の湿りが有ります。 
どうも、オイル下がりが有るようです。 

オイル下がりとは、名前のとおりカムシャフト回りの潤滑オイルがバルブ部分のオイルシール(バルブシール)の消耗によって、燃焼室に入る事です。  
逆にオイル上がりは、シリンダー面の潤滑オイルが燃焼室に入る事です。 

ところで、状況を確認して頭に叩き込んだら、先へ作業を進めます。 
プラグの焼け具合は、指標であって不具合そのものではないからです。 
ある時までの結果が現れているわけです。 
プラグそのものの規格(熱価や突き出し量)や、消耗をチェックし、問題なければ清掃し組付けです。 
  
プラグの焼け具合は、各部のセッティングをしながら、今後の様子見です。 
一旦、オールクリアキーを押したような物です。 
また、オイル下がりについては、宿題です。 
ヘッドガスケットからのオイル滲みも少し見られる為、部品を揃えてヘッドOH(オーバーホール)を近い将来に実施と言う事で! 

 カーボンも落としてバルブの当たりも付ければ、まだまだ調子は良くなるはずです。 
 

ポイントの点検   
点火コイルのブレーカーポイントは、エンジン右側のクランクエンドに有ります。 

転倒すると1番にこする部分です〜 
 

接点はこんな具合   
 
ブレーカーポイントは2つあって、点火系2グループ2つのイグニッションコイルの1次電流を断続しています。 
このポイントは、リレーやスイッチ等と同様にアークによって焼けてきます。 
そうなると、充分な電流が流れなくなってコイルの2次電圧が低くなります。 
また、接点が荒れる事でギャップが狭くなると、電流の切れが悪くなって、やはり2次電圧が低下します。 

接点の焼けは、細かいヤスリ(ポイントヤスリといっても誰も知らない?)で磨きます。 

 本当は交換すればいいんですけど‥‥‥ 
 

スターターの点検  
スロットルとともにすぐにわかったのが、スターターの不具合。
スターターボタンを押すと、シャカシャカと少し空転してからブルンとかかります。
スタータークラッチの滑りが生じているのは明らかです。
今回は、パーツも何も有りませんので、それ以上の不具合が無いか、分解して確認に止めておきます。

スターター部の分解に際しては、まずエンジンオイルを抜いておきます。

アルミパーツでしっかりと造型された作りに、古き良き時代を感じます。 

まるで、ビンテージシングルでも分解しているかのような雰囲気があります。 

旧車は重たいけれど、その分しっかり作られて、多くのファンの思いを支えているんだ!
 

スターターギアの点検  
スターターギアとクラッチの点検です。

スターターのピニオンギアは、中間にアイドルギアを介して、クランク側の大きなギアまで常時噛み合っています。
そして、スタータークラッチはクランク側に付いていて、スターターの回転力をクランクシャフトに伝えます。
しかし、エンジンが始動し逆にクランク側からスターターを回そうとする力は伝えません。
簡単に言えば、自転車のペダルのギアの部分のような物です。
ペダルをこぐ力は伝えるけど、逆のタイヤの転がる力はペダルに伝わってきません。

予想通り、ギアには全く問題がありません。 
さて、クラッチですが、今のところ症状は安定?しています。
それに引き換え、分解点検してひどくなる可能性も無くは有りません!
キックペダルも有る事だし、このままの状態でパーツをあたってみる事にします。
もし、手に入らないとなればそれはその時、肉盛りとかレースを入れたりとか、やっかいな事をしないといけないかもしれません。
 

スターター取外し  
と言う事で、次ぎのスターター本体を点検します。

余分に回っているって事は、それだけブラシの消耗とかが進んでいるからです。
必要であれば、同時にパーツを手配しないといけません。

エンジンの背中に、いかにも電装品って感じで取付けてあります。
左のギアケースに差し込んで、抜けないようにボルト
2本でお尻を固定って感じ。

差し込み部にあるOリングで、ピニオンギア以外はオイルと縁が切れています。
取出す際には、カムチェーンアジャスターが邪魔になりますので、脱着が必要です。
 

スターターです スターターリレーまで一続きの長いリード線が付いています。 
アースはボディーアースです。 

構造は、とっても簡単! 
自動車のようにピニオンが飛び出したりしません。
クラッチ機構は、エンジン側に付いていますからモーターだけです。
模型のマブチモーターを大きくしたのと同じです。

OH! 全体を組上げているボルト2本を緩めて分解します。 

左側からリアカバー、アーマチュアコイル、ローターコイル、フロントカバー。

コンミュテーターの掃除 ローターコイルの受電部です。 
ここに接触する1対のブラシから電気が送られます。 

コイルの極性が回転角度によって入れ替わるように、巻き方を変えたコイルが束ねてあります。 
それらコイルの端子の集まりが、コンミュテーターです。

掃除後 コンミュテーターは、1000番程度の細かい紙ヤスリで磨きます。 
そして、溝部分のカーボン粉等の汚れを取り除き、各コイル間がショートしないように絶縁を保ちます。
ブラシの点検 ブラシは、残量と接触面をチェック! 

残量が少なくなると、ブラシを押し出すスプリング力が弱くなり接触不良を生じ易くなります。 

また接触面が、傾いたり荒れたりせずスムーズに接触を保てる状態か?

組付け ブラシを押込んで、ローターをアーマチュアコイルに組付けます。 

ケース組付け時には、ローターと前後ケースの軸受け部を清掃し、薄くモリブデングリスを塗ります。

パキパキッ! 蛇腹は、OHによって取替えられたスターターのリード線の被覆です。 

で、その横に30年の実力を示す配線が有ります。 
オイルプレッシャースイッチへの配線です。 
ギボシの端子の絶縁ブーツが、硬〜くこびりついて外れません。 
別に、不具合とは関係ないんですが、折角の機会ですから取替えておきます。 
 

若返り! 元々がこうだったとは、想像出来ません! 

 経年変化って恐ろしい〜!

手入れされてる風? ジェネレーター(発電機)のハーネスの被覆もこの機会に取替え、見た目もスッキリ。
クラッチワイヤー点検   
クラッチワイヤーは、レバー取付部が要注意! 

古くなったグリスを掃除して点検すると、捩った内の1本が切れていました。 

ワイヤーインジェクターでスプレーグリスをしっかりと注入し、レバー部にはモリブデングリスを塗ります。 
軽くなった操作力は、ワイヤーの寿命も延ばしてくれるでしょう。 
 

エアクリーナーです   
これが取外し易いエアクリーナーです。 

蝶ネジ2本を外すと、下半分のケースとエレメントが簡単に取り出せます。 

出てきたエレメントには、CB750の刻印が! 

まさか、新車時からのではないでしょうが‥‥‥
今でも新品が手に入るのかしら? 

ケースから取出そうとした時に、種も仕掛けも有りました〜! 
ビリビリビリッ〜、きっちりこびりついていました。でも、そのわりには綺麗です? 
  

エレメントの清掃?   
エアブローして掃除の後、念のために自分の口で確かめます。 

なぜ? 

古くなった物は、見た目でそうでもないのに、良く無い場合があるからです。  
乾式の場合は、エアブローさえすれば、いつまでも使用出来るような誤解があります。  
でも、実際は、エアブローで取り切れない汚れが蓄積して、性能が劣化しています。 

自分の息で確かめるのは、納得のいく方法でしょう? 
 

ストレーナーの点検   
フューエルコックのカップ状の物がフューエルストレーナーです。 
コック部にパッキン付で取付られ、底の部分がレンチのかかる形になっています。 

旧車で避けられないのが、ガソリンタンクの錆! 

根本的な解決策は、タンクの洗浄コーティングでしょう。 
でも、こうやってストレーナーが頑張っています!? 

何か大きな塊がボロボロあるようですが ‥‥‥? 
 

錆びがこんなに!   
塊のような物も拭き取ってみれば小さな鉄粉に! 

フューエルコックのタンク内の吸入口は、タンクの底ではありません。 
大きな物は、そこに溜っているはずです。 
ところが、それを通り抜ける小さな物、それを水も分離するためのストレーナーに沈澱させています。 

せっかく沈澱させても掃除しなければ、いつかまた流れていきます! 

ここに磁石を沈めておくとか、フィルターをホース途中に追加するという事も考えられますね? 
その場合は、沈澱しないような物も吸着するでしょうから、より早めの点検が必要でしょうね! 
 

 つづく  
ここらで一息! 
忘れない内にエンジンオイルを注入します。 

CB750は、ドライサンプ式ですから右サイドのオイルタンクから注ぎます。 
2ストスクーターのような感じ。 
他の多くのウエットサンプ車のように、覗き窓で油面を確認って煩わしさがありません。 
キャップに付いたレベルゲージでF〜Lをチェック! 
これは自動車的〜!(ゲージだけの話しです)

 ちょっとした手入れで、ぐっと良くなる!?

そんな旧車的面手何為箇所は、まだあるのでしょうか?

 

 
ページトップへ 次へ DIY事例紹介トップ  バイク事例集

Copyright  2001-2008  Makoto Nagai. All rights reserved.