事例紹介
 

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 RX7(FD3S)
 エンジン不調
RX7の魅力は、まるで重力から解き放たれたかのような加速を生み出すロータリーパワーによるところが大きい。
スタイルや類い稀な運動性能も、そのパワーやパワーフィーリングによって調律されている。
ところが、そのエンジンが不調となるや、その走りは、フワフワガタゴトと、まるで刃こぼれした刀のように落ちぶれてしまう。

さて、不具合の状況はこうです。
「ゆっくり加速していけば、何とか走れるが、少しでも余分に踏み込めば、エンジン回転が乱れて(ブッ、ブブッ、ブッ、ブー)加速はおろか、ストール(失速)しかねない」
テスト走行をしてみると、アクセルを3〜4分の1ぐらいまで踏み込む分には、普通にシフトアップしながら車速をのせれる。
ところが、少し踏み込んで、ブースト計がマイナスからプラスに転じるところで、ブブッと息つき状態となってアクセルを戻さないとまともに走れない。
どうやら、ブーストがマイナスの範囲内でしか、まともに吹かないってわけです。

これは、さすがに不具合時のフェイルセーフ(システム保護の制御)が働いている程度の変調ではない〜!?
でも、これだけ、はっきりとした症状が有るなら、原因も見つけ易いんじゃない?
確か、メモリー機能付きの自己診断システム(ダイアグノーシス)が備わっているし〜
 
 
思い切って外す

配管を忘れないように取り外す

ゴミや埃が入らないように保管
負荷をかけるとまともに走らないって、まるで、サイレンサーが詰まっているかの様な症状であるけど、サイレンサーは、ストレート構造で可能性は低いし。
仮に排気系の不具合なら、まずは、ターボの焼付きや触媒の詰まりをチェックしなければならないってところ。

しかし、排圧の前に同時に考えられるのが燃焼圧力って条件。
アクセルを踏み込むって事は、まず、燃焼圧力が高まっているわけ。
或いは、さらにさかのぼって、燃焼の以前に、吸入空気量が増えて圧縮圧力が高まっていると考えるのが素直な手順。

そういった時に、単にストールではなくて乱れるって場合は、燃料系よりも、まずは、点火系を疑うのが、これまた手順。

結果的に、見やすい部分から調べるって事になっている様な。
 
作業に際しては、思い切って邪魔な物は取り外した方が無難。
そのままでは、手探り状態での作業になる為、重要な事を見落とす恐れがあるからです。
 
4本セットのプラグ 点火系でまず一番に点検するのは、スパークプラグです。

以前にいつ替えたかわからないって事で、交換後の走行距離を考えると、無条件で交換の段取り。

純正品は、T側L側で熱価の異なる4本をセットにして販売されています。
何となくスペシャルな感じで気持ちいい〜って思ったりして!
でも、1本当り1000円以上とまじでスペシャル〜!
 
それでも大変!
市販のT形レンチ等では不可能
邪魔なサージタンクや配管等を取り外して、エンジンの頭付近をすっきりさせても、プラグ交換の作業性は良くない。
ロータリーエンジンが低くマウントされている為、エンジン側面とサイドフレーム辺りの空間が狭い。
その為、色んな長さのエクステンションバーやユニバーサルジョイントを組合わせてラチェットでカチャカチャと。
元来、プラグにシビアでないといけないロータリーなのに、ここんところは、サービス性において減点であるのは間違いない!
 
これが原因?
白い碍子の先にコードの端子が残ってる
順番にプラグを外していこうとしていると、プラグコードが抵抗無く外れたよ?

プラグコードの端子が、プラグ側にくっついています。
これでは、キャップ内で接触不良を起こしていたに違いありません。
でも、キャップのゴムが碍子にピタッてはまっていたから、ギャップは有っても、プラグは点火していたのではないかな〜?
とにかく、プラグコードは交換って事にします。
やっぱり、見えないところを手探りで引き抜いたりしていると、こんな事が起きるんだよ。
整備性を良くしないとね!
 
タイプの違い
もう少し綺麗に焼けて欲しいところ
すべてのプラグを外してみると、やはり、焼け具合にそれとわかるような差は有りませんでした。

取り付けてあったのは、電極付きながら沿面タイプのイリジウム。
しかし、今回は、カーボン付着も酷いので、一旦現役を退いてもらう。(捨てずに保管!)
代わって純正品は、ノーマルとはいえ、沿面に切り込みが入ったセミ沿面タイプの白金プラグ。

これでも、昔でいえば、完全にレーシングプラグです〜
 
イグナイターも念のため
放熱性を考えた作りです
次にチェックするのは、イグナイターとコイル。
コイルは、抵抗値を確認する。
そして、イグナイターの番。
イグナイターは、エンジン回転変化に応じての通電時間の制御がある為、回転域によっての不具合が発生しやすい。

しかし、単品テストの方法では、
静的な作動部分しかチェック出来ません。
その為、回転上昇につれ不具合が出る等といった高級な診断は無理!
とはいえ、乾電池とテスターで各回路の動作をチェックしておくに越したことはありません。
 
自己診断の出番 そして、当然しておかなければならないのが、自己診断機能による不具合の確認作業。

エンジンルームの左側、インナーフェンダー部分にチェックカプラが用意されています。(写真中央右の黒いケース状の物)
蓋を開けて、下図の様に、リード線でアースを取り、イグニッションスイッチをONにして、サーキットテスターで故障コードを読み取ります。
 
テスターで読む
不具合が複数個ある場合は、順番に表示される
ソレノイドバルブのチェック チェックの結果は、コード45。
チャージコントロール系が断線又は、ショートってなっている。
そのコントロール系には、ソレノイドバルブとエンジンハーネスとECUが含まれているわけ。
そして、そのソレノイドバルブの色別は白。
幸い、沢山有るソレノイドバルブが、カラーシールで色別されているから何とか探せるんです。

まずは、ソレノイドバルブのコイルの断線をテスターでチェック
すると、導通が無い〜!
念のために、他のバルブをチェックすると抵抗値が出ています。
 
 
C/P(ECU)もチェック

ECUは、助手席の足元サイドにある

こんなピンが接触不良していたら?
案外すんなりと見つかってしまったので、ついでにC/Pも見ておきますか〜

C/Pのチェックでは、各回路ごとのチェックの前に、全体的なチェックも大切。

カプラー全体の抜けかけや、メス端子1本1本の抜けかけ。
そして、C/P側のオス端子の折れとかを注意深くチェック。
こうして、予防的な効果を期待するのもDIYならでは!
自己満足ってやつですね〜

でも、実際のトラブルシューティングでは、まずは、カプラー装着状態で各端子の入出力電圧をチェックするのが先決。
そして、接触不良している可能性が高いと確認した上で外す。
そうしないと、いきなり抜き差しすると、知らない内に直ったりして、原因特定や再発防止が出来なくなってしまうから。
 
 
これが主役です

どれも同じような形だけど、品番は良く調べて
 

エア通路がT字形になった切替弁
 

こんな単純な物が、よく壊れるから〜
(以上の写真は、新品です)
数日して、広島から部品が入荷しました。

これが、ソレノイドバルブ単品。
結構いい値段がする電気仕掛けの通路切替弁です。
電磁石で弁が作動し、エア通路が切り替わります。
フリー状態で、写真右の差込口(金属性)と下向きの差込口が通気しています。
通電すると、写真左の差込口と下向きが通気します。
いずれの場合も、もう一方の通路は閉じた状態です。

単品のチェックとしては、テスターでコイルの導通を検査し断線がないかを調べます。

ただ、余談ですが、実際のトラブルとしては、通路の詰まりという電気面以外の不具合も起こるわけです。
特に、バキューム通路っていうのは、揮発ガソリン等の影響もあるわけで、単に外部からのゴミ、埃という事ではありません。
スラッジや重質な液体による作動不良は、通路全体で発生しうるわけだから、最終的な作動(各アクチュエーターの作動)のチェックが必要です。

今回は、電気的な不具合な為、自己診断が有効に働きました。
お陰で、作業性は別として、はっきりと原因も特定でき、短時間で故障探求は終わりました。
しかし、これがバキュームホースの詰まりや破れだったとしたら?

考えただけでも、ぞっとする思いです。
第一、複雑なターボ系統やエミッション(排気ガス浄化)等の制御システムを理解するのも難しく、ましてや、それとトラブル症状を関連付けるのは、余程の体験者でないと無理です。
 
 
バルブの団地〜!

カラーシールは、汚れて確認し辛い
ところで、取替えは、ソレノイドバルブA’ssyとでもいうか、全体を外して分解しないと出来ません。

こんなところも、サービス性って面ではバツ!
見た目は、整理されているようだけど、実際の整備においては、中々、エア通路を辿っていけないし、これの取り外しは、メモやマーキングが必要なぐらい気が重くなる。
 
樹脂性のボディーは、熱等による劣化もあるから、ホース等も慎重に取り外さないとポキッといったらお終い。
たとえバルブ1個の破損で済んでも、さらに、数千円の出費と部品待ちが襲ってくる〜!
 
 
交換でお終い?

慎重にやらないと、壊す恐れ大!
分解して、やっと、右上の1個を取替えたところ。
ここだけでも何個バルブがあるんだ〜?
他にも単品で取り付けられているのもあるから、システム全体では、幾つになるやら?
それらが、仮に、同様の耐久性であるとすれば、この先、様々なトラブルとお付き合いしていく事になる〜!?

だから、故障コードの確認の仕方を理解して、何番は、どの系統の不具合で、どの部品が(ソレノイドバルブとか)怪しいって聞けるようになるって事は、DIY修理にとって大変重要な事でしょ?

ディーラーでの整備料金が幾ら程かは、知らないけれど‥‥

ただし、自己診断機能が助けてくれるのは、あくまでも、電気的な部分の不具合についてだけですので〜
 
最後に重要な事!
修理が完了したら、故障コードのメモリーを消去しないと、以後に誤った情報を残す事になります。
消去の仕方は、バッテリーのマイナス端子を20秒以上外した状態で、ブレーキペダルを踏み込む。
次に、消去されたかの確認は、エンジン暖機後に3分間2000rpmを保ち、その後に自己診断チェックを行い故障コードが出なければOK!
 
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