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ゼファーのクラッチ修理

  
バイクを長期間保管している時に、注意しないといけない事は色々有りますが、クラッチもそのひとつです。 
クラッチは、ノーマル状態で圧着されていますから、長期間放置していると摩擦面が貼付いてしまうのです。
湿式クラッチといっても、オイルにどっぷりとつかっているわけでは有りません。 
オイルレベルのぞき窓との位置関係でもおわかりですね。 
エンジンがかかっている事によって、クラッチ各部にオイルが供給されているのです。 

では、どのような症状になるかと言いますと、ニュートラルでエンジンを始動して、クラッチを握り1速に入れると同時にガクンとエンストしてしまうのです。
普通は、発進出来なくなります。
 
車と違って湿式な為、汚れで動きが悪くなる固着にはなりにくいのですが、逆に摩擦面の貼付きは起り易いといえます。 
貼付きが起き易い要因は、多板式にあります。 
多板式は、複数組みの摩擦面を一方から一まとめに押し付けています。 
クラッチを切る際は、押し付ける力は無くなりますが(解放)、全部の摩擦面に引き離す力が及ぶものでは有りません。 
わかりやすく言いますと、玉突き衝突をした車の最後尾の1台を引き離したからといって、前の車全てが離れるとは限りません。 
程度問題ではありますが、1ケ所でもくっついていると、貼付き状態になります。 

こうなると、オイル給油口からオイルを差したり、ドライバーでこねたりしてもまず無理です。 
下手にダメージを与えるよりもクラッチ分解修理が無難です! 
でも、オーバーホールって言える程の大変な作業ではありませんので御安心!

クラッチワイヤーとレバーを外し、ケースの取付けボルトを緩めて、ラバーかプラスチックハンマーで軽打しはがします。 
ここは、貼付いていて当り前、決してハンマーで叩いたり、ドライバーを合わせ目に打ち込んだりしないように! 
それと、ラバーだからといってバカ力で叩くと、取付部が割れたり、叩いた部分だって割れる場合も有ります。 
呉々も慎重に!
やさしく接してやって下さい。
 

クラッチ出現! ケースをはがすと、エンジンオイルがこぼれますので、トレイで受けるか、事前に抜いておきます。 
抜いておいてもオイルはこぼれますので、ウエスは敷いておきましょう。
クラッチ分解       
クラッチカバーの取付けボルトを緩めて、カバーとセットスプリングを取り外します。 
真ん中のシャフトは、プッシャーで、手前に引けばクラッチが切れる構造です。 
ここは、動きとガタをチェックし、モリブデングリースを塗布しておきます。 
また、ボルトを緩めるにつれスプリング(赤い色)が伸びて来る(当り前ですけど、折れて引っ掛かったり異物が噛み込んでいる場合も有ります)事もチェック。 
  
中身が見えた! カバーを外すと手前のフェーシングが見えます。 
  
今のところは、特に問題は無い様ですが?
湿式多板セット!? アララッ!? 
  
1枚目を取ろうとしたら全部くっついてきた〜! 
  
やっぱり〜! 
これでパワーが伝わるの? 全部くっついてきたと思ったら、1番奥の1枚が残ってました。 
これが1枚のフリクションプレート(ドライブプレート)、茶色い部分はフェーシング材(摩擦材)です。 
裏表の両面に摩擦面が有ります。 

使用限度の厚みは2.8mmです。

摩擦面の様子 スチールプレート(ドリブンプレート)の摩擦面にフェーシング材がこびりついています。 
慎重に1枚1枚をはがして、研摩します。 
幸い、大きな腐食や、フェーシングの剥離は無かったため全て再使用します。 
また、エンジン側も含めてすべての摺動部(くし歯状の部分)に傷や段付、偏磨耗や異物がないか確認します。  
修整前後   #1000ぐらいの紙やすりとオイルストーン(砥石)で仕上げます。 

どちらのプレートも歪み限度は0.3mm

クラッチ組付け 各部にオイルを塗って組み付ければ出来上がり。 
プレートにはそれぞれ裏表があるので、組み間違えないように。 
フェーシングの模様が、左巻きの渦巻きになるように組付けます。(3つ上の写真の向きです) 
プレートは、面取りしてある方からはめ込みます。 

クラッチスプリングセットボルトの締付けトルクは0.9kgm 

ケース合わせ面のパッキンは、スクレーパーで完全に清掃し新品に取替えます。 
仮締め後に均等に締め付け、ワイヤーの遊び調整をすれば作業完了! 
最後にエンジンオイルを忘れず給油します。 
 

 完了  
やはりバイクは動かしてなんぼです!
 
長期保管といっても、たまにエンジンをかける程度ではなく、しっかりと走らせてあげましょう! 
ナンバー無し車なら公道を走らせるわけにいきませんので、テストコースが必要です〜! 
 
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