事例紹介
木製引戸作り(Vレールフラッシュ片引戸) プレバージョン

明かり採りを大きく設けた袖壁と片引戸


フラッシュ戸の利点は、周囲とのコーディネート
それが、リフォームであれ違和感無く溶け込む

<引戸は優れもの>

日本の住まいの出入口といえば、昭和の3〜40年代までなら、各部屋は襖、玄関はガラスの引戸が普通でした。
それが、モルタル住宅と呼ばれるような洋風化とともに、何もかもがドアとなってしまいました。

ドアは、開閉時に通路や部屋の空間を遮るという欠点があります。
開いたドアによって出入りのし難い方向が生まれたり、他者の進路を妨げたり。
その為、それぞれの場所に応じて、左右勝手や内外開き等の取付け方を吟味しなければなりません。
ところが、複雑な動線が関係する場合には、どこかで妥協を強いられる事も起きるのです。

一方の引戸は、開閉時に動線を邪魔する事はありません
まったくフリーにスルー出来るのです。
道路際に停めたミニバンのスライドドアを考えてみて下さい。
塀際の狭い通路を前後どちらからドアに近付いても、開いて乗る事が出来、降車時も同様に前後どちらにも行ける。
また、道路側のドアを開けた際に、後ろから来たバイクとぶつかる事もありません。
さらに、建物の引戸のような両引戸であれば、どちらの戸でも出入りが出来る。
これは、生活スタイルの変化によるレイアウト変更などへの適応性が有るとともに、大きな物の出し入れ時には、全面開口も可能になる。
しかも、少し開いて換気をしている時にも、風によってバタンと閉まる事もバ〜ンと開く事も無い。
要するに、0〜200%の開口まで、まったくフリーに活用出来る優れた構造なのです!

そんな優れた引戸が、現実にはあまり使用されていません。
その理由は?
ドアと比べて敷居や鴨居という部分のように建築的要素が多く、造作手間などのコスト増がある。
家具を置くなどの壁面利用に制約が生じる事、また、それを避けて引き込み戸とするとさらに造作手間が増える。
と言った理由からでしょうか?

しかし、敷居や鴨居という事ではなく、雨戸のように付け枠とすれば、構造も作業も簡単です。
幸か不幸か、既製品の種類もドアとは比較にならない程に淋しい限り〜
DIYであればこそ、出入口はドアという既成概念を捨てて考えて欲しいものです。
 
<フラッシュ戸は安物?>

フラッシュ戸(ドア)というのは、骨組みを表した框タイプと異なり太鼓張りのフラッシュ構造で作られた戸の事。
建物の壁に例えるなら、真壁に対する大壁のようなもの。
当り前ですが、太鼓張りとはいえ、内部には周囲だけでなく骨組みがしっかり有ります。
大壁であっても、在来軸組みの場合が有るのと同様に、フラッシュ戸だからといって、イコール軽量な戸であるとは限りません。
それよりも、框戸(ドア)との大きな違いは、何よりも面材(パネル)によって生まれるデザイン性です。

本来、フラッシュ構造は、面材のデザイン性を活かす為の選択なのです。
ところが、既製品では、フラッシュ=廉価品といった商品が多いようです。
確かに、骨組みは内部に隠れますから、安価な素材を利用出来ます。
さらに、パネルと一体化する事から、軽量でも変形し難い構造が作り易い点もあります。
その結果が、ワンプレスの接着で出来上がるような単調な廉価品となるのかもしれません。

でも、DIYで作るならどうでしょう?
頑丈な骨組みにする事はもちろん、大きな明かり窓や換気ガラリを設ける事も可能なのです。

要するに、フラッシュ戸にするか框戸にするかは、周囲とのトータルデザインの中で考えるべき事になるわけです。
そして、ここで再確認しなければならない大切な事があります。
それは、トータルデザインとは、単に見た目のコーディネートというソフト面だけではない事です。
その場所の戸(ドア)に求められる機能というハード面が、まず第一義的に重要であるという事。
そして、それがどちらの方式でも可能であるなら、見た目のコーディネートが出来る方を選べばベストです。
この事を違った言い方で表現するなら、その機能性を高める為に、どちらの方式がよりベターなのか?

話が戻りますが、フラッシュ戸だからといって、機能面で大きな制約があるわけではありません。
外観デザイン処理の違いだという事です。
既製品を基準に考えてはいけません。
既製品に無いもの、いえ、DIYだからこそ作れる無限の可能性にチャレンジしてみませんか〜?

とは言え、現実には、フラッシュ戸の利点である面材のデザイン性が発揮出来ません〜!
それは何故〜?
それは肝心なドアパネルに適した面材、主に合板の種類が身近に少ないのです。
3×6サイズ(910ミリ×1820ミリ)を超えるとHCでの取扱いが、グ〜ンと減る事は既に書きました。
ところが、種類が多い3×6サイズでも、化粧合板と言えばプリントかクロス張りの似通ったグレードのものばかり。
HCにしても、合板=安普請って考えがあるのかもしれません。
その為、銘木合板等をHCで買おうとすれば、建材メーカーから梱包単位で取寄せる事になるのかも‥‥‥
そんな難しい事を考えるよりも、このような場合は、素直にネットショッピング〜!
必要量、或いは余裕分をみて手配出来るならオークションでも構いません。
 
 
洗面脱衣場の引戸を開けると浴室の3枚引戸が続き、同じ動作でスムーズに出入り出来る。
<事例紹介では>

廊下に面した洗面脱衣室の出入口をリフォームしました。
これは、洗面脱衣室と浴室を合わせたトータルリフォームの一環作業です。
元々の引戸は、ガラス入りの両引戸で、長期間の使用による傷みで敷居は削れ、引戸の戸車も錆付き、ガタガタと使い辛い状態。
直せば良くなるのはわかっているのですが、どうしても引っ掛かったのが、そのデザイン!
廊下の仕上げ材は、銘木合板の中でも突板が厚い上級品。
ところが、引戸のパネル部にはテカテカのプリント合板が入っていました。
また、ガラス部分は型板ガラスのありふれた柄で、まるで昔の水屋(食器棚)って雰囲気〜
まるで、まったく別個に持って来たかのような統一性の無いデザインという事もあって、手直しではなく新たに作る事に。

その新しい引戸は、片引戸!
引き違い戸のメリットは、左右開きや取外してのフルオープン等、フレキシブルさにあります。
しかし、それは、最大公約数的であり、言い換えれば曖昧であったり取敢えずって感じ。
そこで、部屋周りの改装完了に合わせて、片引戸に変更する事にしました。
片引戸とする事で動線を整理し、洗面脱衣室の居住性の向上や間仕切壁の強度アップも狙って。
その中心となる引戸は、出来るだけ大きな開口を残しつつ、軽量かつ頑丈に。
そして、選んだ構造は、框戸のような骨組みを有したフラッシュ構造!
さらに頑丈な袖壁を有した片引戸は、一見、引き違い?と感じるような自然なデザインで内装に同化しました。

廊下に面した出入口は、引戸という事で、廊下のどちらから来ても出入りし易く大変便利です。
もし、同じ事をドアでしようと思えば、内開き(廊下にドアが出ない)と言う事になるでしょうか?
ところが、それでは、風呂の出入りをしている人にガツンと当たってしまうかもしれません。

外観デザインの個性であれば、既製品でもある程度は実現できます。
しかし、その場所に求められる欲張りな機能性は?

既製品では決して成し得ない、完全オリジナルならではの機能性溢れる引戸を自作されてみる事をお薦めします。
 

 
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