ルームインルームをDIYで作る(プロトタイプの事例) |
ルームインルームをDIYするにあたっての重要な事は、材料の選定と調達です。 そして、次に大切な事は、強度が期待できる加工法です。 総じて、頑丈にすればする程、重量増になるという相反二律の条件があります。 ただ頑丈にという考えでシェルターを作れば、太い鋼管を組み立てた‥‥‥ そうです、自動車のロールケージの様に部屋の中に籠のような物を作れば良い。 しかし、それをインテリアにとなれば、かなりの金属加工が必要となるでしょう。 手の届く部分に足場のクランプって訳にはいきません。 また、パイプといっても重量は相当な物です。 しかも、充分な生活空間を確保しつつ、重量に耐えるとなると太くて厚い物が必要です。 そうなると、手軽に入手可能で加工も組立も簡単って事が難しくなります。 そこで、材木の良さが際立ちます。 軽くて強度があって、入手しやすく、加工も簡単、しかも日常生活において利用価値が得やすい。 その材木とパイプの長所を上手く組み合わせたところが、まさにルームインルームなのです。 水平架材にとって危険な衝撃力は、粘りのあるパイプで緩衝させます。 その結果、荷重を支える構造体をシンプルにする事が可能となります。 軸組みは、上からの荷重を受ける事から梁勝ち構造としています。 構造的に一体化した上枠を柱が支える構造は、天板を足で支えるテーブルと同じ理屈です。 そして、その接合部を強度バランスの良い構造にしています。 このバランスが良いという意味は、強弱のムラが少ないという事です。 接合部の加工において、各材料の欠損をバランス良く行っています。 ルームインルームは、適切な金具の使用によっては、さらに強度を高められる事と思われます。 しかし、組立の簡便さや美観への影響、また、ボルト穴等による材料の破壊についても検討が必要です。 この基本構造は、日常使用における付加価値をも考慮したものです。 隣り合う2面への壁材の取付けは、構造体の剛性を大きく高めます。 また、床材は、日常生活での足元を安全にします。 その他、木造ですから自由に発展できる良さがあります。 さらには、既存の建物と一体化させて建物を補強する事だって可能なのです。 しかし、このルームインルームは、あくまでも、簡単に組立や解体移設が可能なように考案されています。 ルームインルームは、以上のようにいくらでも発展可能であり、また、数多くある選択肢の単なる一つに過ぎないように思われるかもしれません。 しかし、既存建物への適応性や取扱い易さ等の多くの条件を踏まえ、目標重量を設定する事で技術研鑚されています。 一見簡単、そしてDIYでも製作出来るスタイルこそが、可能性へのチャレンジャーの必然とも言えるのです。 ルームインルームの目標重量は、この基本型において260KG。 これは、一辺2メートルの構造体においては、65KG/m2に相当します。 この程度であれば、テーブルに大人4人が座っていると思えばよい重量なのです。 建物の崩落から、大人4人で貴方を守る事は、いずれにしても大変危険な事であるに違いありません。 しかし、ルームインルームであれば、より安全に可能性へチャレンジする事が出来るでしょう! |
部材加工 | |
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材料は、国産地場材を迷わず選択。 素材は、強度面や入手のし易さ等から検討し、桧の105角モルダー仕上げに決定。 長さ4メートルの規格で@4725円とまずまず。 これを2本に分割しますので、8本有ればOK! 当然その値段では、無節ってわけにはいかず、小節ってところでしょうか? どうやら、死節はなさそうだけど接近して節がある部分もあって、上物って感じではなさそうです。 でも、さすがは桧です。 おいしそうな飴色の艶が出ています。 香りもプ〜ンと漂って、本物の木の良さが充分伝わってきます。 |
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ところが問題はこれ! 手配できたのは背割り材〜! 一般建築用材ですから背割りが入っている。 背割りは、ご承知のように乾燥過程で勝手なところに割れが出ないように、予め鋸で割れ目を入れているものです。 その結果、背割りの半対面が守られ、表し仕上げに使用出来るようになっています。 ところが、背割りは自然の割れとは違って、材の端から端までにわたって、歯の深さ分を完全に繊維が切断されています。 その為、乾燥とともに割れが広がり断面がバチ型に変形していくのです。 これが、仕口加工を難しくします。 そういう訳で、背割りは、構造の強度面と加工性といった点において好ましくありません。 本来は、構造用の仕上材(乾燥後の加工材)を選択するのがベストです。 |
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これは、下枠や上枠で用いる相欠き継ぎの部分です。 材のグレードから加工部分にあっても、節は多数存在します。 硬い節があると、普通に欠こうとすると、ノコ歯が逃げたり、逆目でノミが上手く使えなかったりします。 そこで、写真のようにスライドノコで寸切りしてからノミで飛ばす方法を取ります。 欠き込みは、1/2Hと1Lです。 背割り面は、必ず欠き取る側にします。 |
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こうして仕上げると、たとえ節を避けれない状態であっても、極めて正確な面を出す事が出来ます。 また、背割りが継ぎの強度に影響を与えていない事もわかります。 |
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これが下枠の全体ですが、この段階では相欠ぎで組んでいるだけです。 相欠き部分が、背割りによって強度低下していない事がわかります。 |
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次は、出来上がった下枠に柱穴加工をします。 柱は、下枠に立て込まれるとともに、下枠同士の接合材の役目をします。 その為、ほぞ穴は相欠きの下側にも達することになります。 ほぞは、1/3Lで5/6Hです。 |
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また、柱の下枠との取り付け剛性を高めるためにほぞを2段加工します。 ノミで仕上げてもいいのですが、節が邪魔をする場合にはルータ−を活用します。 2段目の加工部は、2/3Lで1/4Hです。 |
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これが出来上がった柱部の加工の様子です。 |
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柱側は、下枠の2段ほぞ穴に合うように加工します。 やはり、節が邪魔をする場合には、スライドノコを活用します。 |
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しっかりと接合出来ました。 柱を立てることによって、下枠の部材は緊結されます。 |
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上枠の加工は、基本部分は、下枠と同様です。 異なる点は、柱との接合方法です。 上枠部分は、緩衝装置(鋼管ネット)との複合接合になるため、柱との接合を鋼管ネットの支持柱(鋼管柱)が行います。 鋼管柱は、鋼管ネットを取り付けると同時に、柱と上枠の接合の役目をする事になります。 さらに、軸組みの剛性を高めるために、柱との浅いほぞ組を加えています。 この部分は、下枠と同様です。 |
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鋼管柱を立て込むための貫通穴を加工します。 位置ずれを防ぐためのビス止めをしてから、ギムネで下穴を開けノミで仕上げます。 大きな50ミリのギムネで一発で開けると、何分手作業ですから少し精度が悪くなるようです。 |
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加工の済んだ上枠と鋼管柱を仮に接合し、確認しています。 |
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柱上部の加工も同様に行います。 |
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のみで仕上げます |
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加工の出来上がった柱上部 |
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全ての加工が出来上がった部材
各部とも背割りを上手く逃がしているのがわかります。 *左下側の4本は、予備部材です。 |
組立作業 | |
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まず、下枠を配置し、柱を立て込み一体化させます。 次に、柱上部に上枠を順番に組み付けます。 この時、浅いほぞ組が有効に働き、安全に組立が行えます。 |
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下枠と同じ形で上枠が組み上がります。 |
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最後に鋼管柱が、上枠と柱を緊結します。 |
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鋼管柱に鋼管ネットを組み立てます。 これによって、軸組構造体がさらに堅固な物となります。 |
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組み上がった基本構造体を見上げたところです。 組立作業は、この基本構造であれば、一人で1時間弱の作業です。 この下に入った時の安心感は、一人でも多くの方々に体験して頂きたい!
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ルームインルームは決して安全を保証できる物ではありません。 しかし、建物の補強の場合はどうでしょう? 高い費用をかけても、取りあえず金具を追加したような工事で、果たして安全を保証出来るのでしょうか? 仕上げも取り除かず、外観からボルトを打つような補強は、本当に構造材を補強出来ているのでしょうか? 内部で腐朽やシロアリの食害が生じているかもしれません! 或いは、仕口加工で欠損の著しい部分にボルトを打ち込んでいるかもしれません。 大切な財産を無駄にしない為にも、慎重に作業を進める必要があるのではないでしょうか? |
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