ワンポイントコラム

 

濡れ
 
濡れるっていうと、雨で濡れるとか色々あるけど、ここで取り上げるのは半田付け作業に関連した話の事。

ロウ付けって呼ばれる接合法は、溶接とは違って、母材とは異なる金属を用いて接合します。
それで、その金属をロウって呼ぶわけだけど、母材よりも低い温度で溶ける便利さがあります。
そんなロウ付けの中で、最も身近なものが半田付けなわけです。
半田は、ロウ付けの中でも軟ロウと呼ばれる接合材で、強度的には弱い部類となります。
でも、弱いといっても電気配線の接合に限らず、ラジエーターや配管類、またボディー板金にも使われたりもします。
あの柔らかい半田で大丈夫?って思うかもしれませんね!
配線を基板に半田付けしたのにポロッと外れた〜!な〜んて、経験が誰にもあるはず〜?
でも、本当のところはどうなんでしょうね?
ところが、半田付けは、とっても強いっていうのが、自分の経験!

では、ポロッと取れた場合は、何か不具合があったのでしょうか?
そこで、作業の重要なポイントとして「濡れ」という状態があるわけです。
「濡れ」というのは、半田が接合面に溶けて浸透する事を言います。
例えば、配線同士を接合する場合を考えます。
寄り合わせた銅線に半田を溶かす場合なら、半田ごてを銅線に当て、そこに半田を溶かします。
この時、「濡れ」という事を考えていないと、表面に半田を擦り付けたような〜
ところどころには、小さく玉になった半田が付いているかもしれません。
それで、これはいけないって、半田ごてでゴシゴシ均しにかかるわけです。
こうして、とりあえず、半田でコーティングされたようなつなぎ目が完成!
一見、しっかりと繋がったようで、動かしてみるとギシギシとほつれてきそうな感じ。

では、「濡れ」という事を意識して作業をした場合は?
まず、銅線に半田ごてをしっかりと当てて、接合部全体を充分に暖めます。
そして、そのこて先に半田を差し入れて溶かします。
すると、接合部全体が半田の融点に達しているため、半田はみるみる溶け込んでいくわけです。
こて先や銅線に触れた半田は、溶けたと見えるや否や寄り線の中に浸透していきます。
この様子が「濡れ」なわけです。
こうして接合された部分は、広い接合面で隙間無く密着しています。
その為、ガッチリと繋がって電気的にも強度面でも安心です。

という事で、プリント基板への配線の接合なら‥‥‥
プリント基板の配線接合部に予め半田を盛り、配線にも、同様に半田を溶かし込んでおきす。
そして、接合は、両方を付き合わせた部分に半田ごてを当て、溶かし合わせれば完了。
両方の半田が完全に溶け合って一体化し、しっとりと馴染めばOK!
これなら、ポロッと取れるはずはありません!
もし取れるとすれば、プリントごと剥がれてしまうって場合でしょうから。

余談ですが、アルミのロウ付けとかで擦りながら接合するって方法があります。
これは、接合面の酸化皮膜を削って、「濡れ」の条件を整えているわけで、擦っただけで濡れるわけではありません。
強い接合は、接合部の温度に加えて、表面の状態、さらに接合部の形状やクリアランス等の条件が整う中でしっとりと濡れる事で得られるわけです。
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